中国AI

マルチAI環境の作り方について(DeepSeek、Claude、GPTで動作確認済み)

こんにちは。上海KEMBO 総経理 CTO の佐々木です。

前回、中国でビジネスをする方に向けて、AI環境の備えについてお話ししました。今回はその中身、「エンジンを切り替えられるマルチAI環境」を実際にどう作っているかについて書いてみたいと思います。

なぜマルチAI環境を作ったのか

理由は大きく3つあります。
1.特定のAIが使えなくなっても業務を止めないための備え
2.日進月歩で優秀なAIや安価なAIが出てくる中でどれか一つに縛られないための柔軟性
3.中国でビジネスをしている立場として中国のAIも活用したい
という考えです。

一番の理由は、中国のAIを取り込んだ環境を作ること

中で一番大きいのは、最後の理由です。僕は上海を拠点にビジネスをしています。西側のAIだけに頼る環境ではなく、中国のAI(DeepSeekなど)も同じように使える環境を作っておく。これが今回の環境作りの出発点でした。

副次的な効果として、AIごとの得意分野で作業を分けられるようにもなりました。例えばClaudeは画像そのものを作ることはできませんが、画像を理解して構成を考えることは得意です。そこで設計はClaudeにやらせ、そのままGPT側に「この通り絵を作って」と渡す、という分業ができます。GPTに設計から任せるのはもったいないと感じているので、この使い分けは重宝しています。

有料プランに入っていても時間あたりのセッションでのトークンを使い切るときがあります。複数のAIに作業を分散することで、効率よく消費もならされます。

また、DeepSeek は 8 月に値上げがありましたが、それでもまだ他 AI よりかは安いので、長い時間をかけて行う作業を任せる際に DeepSeek も重宝しています。

設計のポイント①:MDファイルの読み方を設計する

環境の土台になるのは、Markdown(MD)ファイルです。「起動と同時に読みに行くファイル」と「特定の作業をするときだけ読みに行くファイル」を、最初にしっかり分けて設計します。

厄介なのは、AIによって最初に読みに行くファイルが違うことです。Claudeは CLAUDE.md を読みに行きますが、他の多くのAIは AGENTS.md を読みに行きます。そこで基本のルールは AGENTS.md に集約し、CLAUDE.md からはそこへリンクを貼るだけにしています。大元には「この環境ではこう動作する」「このファイルを読んでルールに従う」という指示を書いておきます。読みに行くファイルを1本のリンクに集約できるという点は、設計上のポイントです。(AIにより例外あり)

設計のポイント②:担当ごとに記録を残す

僕はテーマや案件ごとに「担当」を分けて、それぞれのMDファイルに今どんな状況か、何を決めたか、次に何をするかを記録しています。ソフトウェア開発のリビジョン管理に近い感覚で、担当ごとの経緯を追える状態にしておくということです。

これはGit(ソースコードの変更履歴を管理する仕組み)とは別の話です。僕が普段使う作業ファイルはGit管理していません。Gitで管理しているのは、この環境を他の人に配布できる形にまとめた「配布用スケルトン」というツールの方です。混同しないようにしておきたいところです。

バックアップは、MDファイルや作業ファイルをクラウド(OneDriveなど)に置いておくだけで十分です。複数のPCにまたがって使う場合にも活用できますね。

設計のポイント③:サブエージェントを使い分ける

AIによって、サブエージェント(作業を分担する下位のAI)を呼び出せるものと呼び出せないものがあります。呼び出せない場合は、AI同士が連携してから大元に戻ってくる形になったり、大元が軽量なモデルを呼び出して作業させたりと、パターンが分かれます。

僕の場合、軽い調査を大量に行いたいときは、DeepSeekのV4 FlashやClaudeのSonnetのような軽量なモデルにリサーチを任せます。情報の指示出し自体は、上位の高度なモデルに行わせます。集めた情報の整理や割り振り(キュレーション)にも、比較的安価なモデルを使うことが多いです。どのパターンでどのモデルを使うかは、コストと精度のバランスを見ながら決めています。

コストの面では、DeepSeekのような中国系AIは、ClaudeやGPTに比べて大幅に安く使えます。正確な価格は変動するので、気になる方は公式ページで確認してみてください(DeepSeek公式料金ページ、Anthropic公式ドキュメント)。重い処理を安価なAIに任せられるのは、実務上かなり助かっています。

備えとしてのセキュリティ

複数のAIに情報を渡すとなると、セキュリティが気になる方もいると思います。ここは、ローカルで動く軽量なAI(LLM)を間に挟み、外部に送る前に社名や機密情報をコード化・匿名化してから送信する、という仕組みを作ることもできます。

最初の一歩は、AIに直接聞くこと

ここまで読んで「自分には難しそうだ」と感じた方もいるかもしれません。ですが、僕がおすすめする最初の一歩はシンプルです。AIに直接聞いてみることです。

「こんな環境を作っている人がいるらしいけど、自分も同じようにやりたい」とAIに伝えれば、そこから会話が進みます。頭の中に「こんなことがやりたい」というイメージさえあれば十分です。まずはやってみることが、一番の近道だと思います。

おわりに

マルチAI環境は、一度に完璧なものを作る必要はありません。担当を一つ作る、MDファイルを一つ用意する、そこから少しずつ広げていけば十分です。中国でビジネスをする方にとっては、中国のAIを含めて使い分けられる環境を持っておくこと自体が、ひとつの備えになると思います。